The Great Wall

トンチキ映画を勧められてすぐに見てしまうほどには暑いなあと思う今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。私は最近映画「グレートウォール」を見てだいぶ面白かったので、ここに感想を記録しておきたいと思います。 「HERO」「LOVERS」などの武侠映画から「初恋のきた道」「単騎、千里を走る。」といったヒューマンドラマまで幅広い作品を手がけ、2008年の北京オリンピックで開幕式の演出も担当した中国を代表する巨匠チャン・イーモウが、「ジェイソン・ボーン」シリーズで知られるハリウッドスターのマット・デイモンを主演に迎え、万里の長城を舞台に繰り広げられる壮絶な戦いを描いた中国・アメリカ合作のアクション大作。金と名声のためだけに強大な武器を求めて世界を旅し、万里の長城へとたどり着いた、デイモン扮する傭兵ウィリアムが、60年に一度現れる圧倒的な敵を前に団結して戦う仲間と出会い、その中で戦う理由を見出していく。長城を守る司令官役でジン・ティエン、長城に潜む謎めいた男でウィレム・デフォーらが共演。 引用元:映画.com これ先日何かのはずみで私が「『ボーン・アイデンティティ』に途中で挫折した」という話をしたら「マット・デイモンといえば……」みたいな流れで教えてもらった映画です。 マット・デイモン、自分が制作に入っている「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の主演を蹴ってまで出たのに大コケしたとかいうエピソードもそれはそれで「マットデイモンってそういうとこあるよな」って感じでめちゃくちゃ笑うのですが、あらすじを見て「白人救世主っぽくて胡散臭い」という印象を抱いた私に対し、紹介してくださった方が「そういうものを批評するレベルに至ってない、とにかく要するにモンスター映画」ということを仰るのでそれはもう「見るしかないだろ」となり、視聴に至った次第です(長い!!) マット・デイモン、『グレートウォール』が失敗することを悟っていた ─「大惨事になると思った」- THE RIVER 話の内容は「六十年に一度襲来しては人々を襲う『饕餮』という怪物に対抗するため、万里の長城を砦に迎え討つ軍隊「禁軍」と、彼らに協力し共に戦う弓の名手で盗賊のマットデイモンが頑張る話(ペドロパスカルとウィレムデフォーも出るよ)」という感じです。 中国にある「黒色火薬」という一攫千金の種を狙って流浪していたマットデイモンとペドロパスカルが禁軍に捕まり、そこで出会ったウィレムデフォーとともに脱出を画策。しかし饕餮という脅威に対抗すべく組織された禁軍の戦闘力、「私利私欲のためではない、大義のために戦う」という隊長リン(ジン・ティエン)の言葉に心動かされたマットデ……ウィリアムは、彼らと共に饕餮に立ち向かうことを決意します。 衣装が衣装すぎる 禁軍が四部隊に分かれており、部隊ごとに甲冑というか軍服のカラーが違うのですが、これが原色キラキラのテカテカで「THE・衣装!!!」感が凄すぎてさすがに違和感がありました。ファンタジーや時代劇などで衣装が汚れていない・くたびれていない(=新品すぎる)などで酷評されることはままあるわけですが、ここの衣装の煌めき具合は「新品すぎる」とかいう次元を超えておりある意味潔さはありました。まあ「悪目立ち」はしているんですが…… 効率の悪い最強部隊 禁軍には女性だけで構成された「鶴軍」なる部隊が存在するのですが、これが両手に槍を持って高台からバンジージャンプをし、下から万里の壁伝いに登ってこようとする饕餮を仕留めるという技で戦う集団。しかし凶暴なモンスターであるところの饕餮が長槍を二本刺された程度で倒れるわけもなく、魚の餌よろしく敵の只中に飛び込んでいくために兵士たちも次々食べられてしまいます。見ていて何も楽しくない絵面なのですごいです。 後半、とある実験をするために饕餮生捕り計画が実行されるのですが、饕餮を眠らせて捕えるため仕掛ける槍に強力な眠り薬を塗りつけるシーンが出てきます。その薬を軍師ワン(アンディ・ラウ)が鉢で練り、そこからお椀に一杯ずつ兵士に渡すのですが、それがなんかごはんの配給みたいで「こんなにちんたらしていていいのかな……」と人ごとながら心配になったりしていました。 なんか映画の作り的にもっと派手なアクションとかがあってもいいと思うのですが、あんまりそういう点で印象に残っている部分がないんですよね。禁軍の戦闘スタイルは全体的に個性的ではあったのですがいかんせん全体の見せ場があまりない。建物の隙間から大きいハサミが出てきて壁を登ってくる饕餮をバツンバツン斬っていくのはちょっと面白かったです。 ウィレムデフォーの無駄遣い いやまあ無駄遣いは言い過ぎかもしれませんが、長年捕えられていてウィリアムたちが来たのをきっかけにとうとう脱出成功したものの、黒色火薬を携え一緒に脱出したウィリアムの友達ペドロパスカル(役名忘れた)を裏切った結果、黒色火薬を盗賊に奪われ爆発して一人退場って流れ、もっとどうにかできなかったんだろうか……「強欲西洋人の末路はこうだぞ」みたいな、そういう意味だったんだろうか??? 圧倒的物量で見せてくる画面力の高さ 人間の数もまあそうなんですが饕餮の大群があまりに大群すぎて「こんなん絶対勝てるわけね〜〜」みたいな絶望感を与えてくれるのでそこがとても良かったです。他作品でもそうですが「出すときは徹底的に(量を)出す」チャン・イーモウ映画の画面力はすごい。今更ですがチャン・イーモウ映画は画面が本当に美しいんですよね。この映画も色彩の鮮やかさとか絵面のダイナミックさとか、そういった点がやっぱりすごいです。 大義か〜 これは個人的な感情にはなるのですが「大義」とか言われるとへえ〜ってなってしまうタイプの人間なので、そのへんのことはよくわかりませんでした。同じチャン・イーモウの「英雄」で秦に滅ぼされた趙の人間が秦の大王に恨みを抱き暗殺を画策するけど「天下を統一し国を平定できるのは秦王だけ」ということに気がつき納得する、みたいな流れに通じるものはあるんだと思います。「英雄」で示されたものはそれなりに理解できるし、それはそこに至るまでの過程も丁寧に描写があったからでもあると思います。その点「グレートウォール」に関してはとにかくモンスター方面に振り切りすぎているので、まあ致し方なくもあるといえばそうなんですが…… アンディ・ラウは最高 これは非常に重要な点なので最後に書き留めておきます。アンディ・ラウはいついかなる時も、どんな映画に出ていても最高にかっこいいです。 なんか色々書いてしまったのですが色々書いてしまう程度にはだいぶ面白かったです。時間も90分程度で見やすいので、ぜひどうぞ!!

July 24, 2024

Following

フォロウィングHDレストア版です。来月からアマプラ見放題に来るとはいえ、映画館で見ておきたいんだよ俺は!ということで滑り込み鑑賞してきました。ジョン・ノーランおじさんも出るよ!(謎方面のネタバレ) クリストファー・ノーラン監督が1998年に発表した長編デビュー作。他人の尾行を繰り返す男が思わぬ事件に巻き込まれていく姿を、時間軸を交錯させた複雑な構成で描き出す。 作家志望のビルは創作のヒントを得るため、街で目に止まった人々を尾行する日々を送っていた。そんなある日、ビルは尾行していることをターゲットの男に気づかれてしまう。その男コッブもまた、他人のアパートに不法侵入して私生活を覗き見る行為を繰り返しており、ビルはそんなコッブに次第に感化されていく。数日後、コッブとともにアパートに侵入したビルは、そこで見た写真の女性に興味を抱き、その女性の尾行を始めるが……。 1999年・第28回ロッテルダム映画祭で最高賞にあたるタイガーアワードを受賞するなど高く評価され、鬼才ノーランの名を一躍世界に知らしめた。2024年4月、デジタルリマスター版にてリバイバル公開。(出典:映画.com) 結論から言うと「追っている側がいつのまにか追われる側になっていた」サスペンスで面白かったです。70分でよくここまで詰め込んだなと思うし、70分という短さだからこそ勢いがあって良かったと思いました。今ではお馴染みの時系列入り乱れ構成とか、永遠に新事実が出てくる多重構造とか、総合して夢と現実の区別がつかなくなってくる感じのパーフェクト虚構、そういうものが最初から全部積まれていたまさに「原点」でした。 見終わったあと「あれはなんだったんだろう?」という疑問は(ノーランの他作品同様)ありつつも、わりと初見でちゃんと理解できたのでそれも良かったです。最後に明かされた事実から全部たどっていけるので、あーそうだったのか! って腑に落ちる楽しさ。この物語の事実構成ってどこを起点にして作ったのかな〜って考えると面白いです。 あとコブ役のアレックス・ハウ氏、後年ノーランが起用したジョセフ・ゴードン=レヴィットとかロバート・パティンソンとかに共通する雰囲気を感じたので、ノーランの趣味って昔から変わってないんだなと思って個人的にはそれも良かったです。主演のジェレミー・セオポルド氏はテネットにも出ておられたとのことで、現段階では全然記憶にないのでテネット見直したいです。あとはジョン・ノーランおじさん。ここでも出ていたんだね。 白黒フィルムの風合いも柔らかく滑らかでありつつもわりとコントラストははっきりした描画で好きでした。グレインもいい感じに乗っている。テネットをIMAXで至近距離で鑑賞した時、遠景のボケがすごくよく見えて好きだったこととかを思い出したので、テネットをまたIMAXで見たいです(テネットの話で終わるな)。

May 24, 2024

DUNE: PART 2

観てきましたね。以下ネタバレを含みます。 これ完全に「神話」でしたね。なんというかこう、面白かったは面白かったんですが、それよりも「もはやこれは神話だなあ」という感想が自分の中では強かったです。(説明になっていない) 救世主として信仰を集めるポール、それに従う民衆の熱狂、陰謀と確執は砂漠の深い砂のように渦巻いて、全員でその中に飲み込まれていくような、そういう狂気の166分間だったと思います。いや〜〜〜チャニ……(お察しください)。 そしてやっぱりキャストがとにかくいいですね。皇帝がクリストファー・ウォーケンだったのでなんかもうね、この人はさ……「野心家の没落」みたいな役をさせたら一流じゃないですか?(※一流です) そもそも皇帝の過去とかべつに前作でもたいして語られていないのに、初出で「シャダム4世とは何者なのか」みたいなバックグラウンドを存在感だけで表現しているのがすごすぎるんですよね。 そしてレア・セドゥ出てきたからひっくり返るかと思った。レア・セドゥが出てきた時のオタクの反応「レア・セドゥだ!!!!」しかできなかったもんね。レア・セドゥの魔女は似合いすぎるんだよなあ。ベネ・ゲセリット、こういう世に生きる女性はなるべくして魔女になり、力強くて好きですね。 オースティン・バトラーもとても良かったのでフェイド=ラウサが退場してしまって悲しい。なかなか強敵感があったのでもっと活躍が見たかったです。あとなかなかの強敵感だっただけにポールとの決闘シーンがあっさりしていたのも「もっと見せてくれよ!!!」と個人的には思いました。 あと今作を見てリンチ版でスティングが演じた役がフェイド=ラウサだったんだなあと思い出しました。PART1を見て「スティングいないな……?」って思っていたので出てきてくれて良かったです(スティングではない) フェイド=ラウサの生誕イベ(言い方)も良かったですね。ああいうシーンって映像で見る分にはカラーだと情報量が多すぎて散漫な感じになるのかもしれないなあと見ている時は考えていました。モノクロの闘技場って個人的には「ブランカニエベス」(パブロ・ベルヘル監督 2012)を思い出して、あれも良い映画だった。 【ネタバレ】『デューン 砂の惑星 PART2』白黒シーンに込められた意図が深すぎる ─ あのタイミングでなければいけなかったワケ - THE RIVER こういう権力者同士の覇権争いみたいな話って(自分に縁がなさすぎて)面白いんですけど、とにかく彼らのエネルギー量が物凄いので観ていてとても体力を使うな〜といつも思います。近年だとゲームオブスローンズとかね。でもどの物語もだいたい一人二人は「普通っぽい」人がいて、そういう人が観客の好感を集めたりすると思うんですけど、DUNEに関しては個人的には今のところそういう人がいないので、何が起きても永遠に「へー!? わー!? すご〜い!」が続き、続き、気づいたら幕……終わったが……みたいな、割と置いて行かれた感もあります。そのへんが自分の中での「神話」印象にも繋がっているのかな。 ただなんとなくイルーラン姫はそういう「普通っぽい人」的立ち位置な気もするのですが、まあ全ては3に続く……という感じでしょうか。原作まだ未読なんでね……次回作を待つ間に読みたいです。

March 25, 2024

Psycho Goreman

この「サイコ・ゴアマン」というタイトルを目にした時からすでに好きだったとしか言えないのですが、見たらやっぱり好きでしたね。シネマート新宿で上映されたタイトルというのも個人的にはポイントが高いです(シネマート新宿に信頼を寄せているタイプのオタク)。 太古より庭に埋められていた銀河の破壊者<残虐宇宙人>は、少女ミミ(8歳)により偶然掘り当てられ封印を解かれた。だが、すかさず容赦ない殺戮の限りを尽くすはずが、極悪な性格のミミに自身を操ることが可能な宝石を奪われていた。かくして無慈悲にして計り知れぬ力を誇る暗黒の覇者は、サイコ・ゴアマンと名付けられ少女にたいへんな仕打ちを受けることとなる。一方、残虐宇宙人の覚醒を察知したガイガックス星の正義の勢力<テンプル騎士団>は宇宙会議を開催、最強怪人パンドラを地球に送り込む――。 出典:公式サイト こんな特撮はイヤだ① カナダでB級映画になる 自分は特撮に詳しくないのですが、それでもわかる「特撮」ぶりでした。宇宙人はCGではなく人が着て動くタイプのやつでしたし、PGの仲間たちがPGの招集に応じて地球に降り立ったシーンとかも、リーダーを筆頭に両脇を他のメンバーがやや後ろで控える三角形の配置でこう……「特撮で見たやつ!!」って感じでよかったです。 またこの仲間の一人に「ウィッチマスター」という宇宙人がいるのですが、この人が日本語を話すことなどからも、監督はかなりジャパンの特撮がお好きなんだと思われます。 あと打倒PGを目指す怪人パンドラの造形が、個人的にはこの人を思い出させる感じだったんだけどまったく関係ないですかね。そのへんも各自視聴の上判断して頂きたいところではあるのですが…… こんな特撮はイヤだ② 極悪非道の少女(8歳)に虐げられる ミミです。この映画は彼女に尽きると言っても過言ではないですね。兄を虐げ、気になる男子には気味悪がられ、同じテンションで残虐宇宙人をも従える。とにかく絶対王者を自負してやまないミミのキレっぷりは最高にいいです。十字架の前に跪いて祈っているかと思いきや、神に対して「用無し」呼ばわりとか、こんなパンクな八歳になりたかったよ(なお友達はいない模様)。 ミミを演じるニタ = ジョゼ・ハンナくんは本作が映画初出・主演だそう(芸能活動自体は三歳から)ですが、とてもそうは思えない貫禄と圧がすごいです。初映画でこれだけすごいともはや「素なのでは?」とすら思う。 こんな特撮はイヤだ③ 少年少女、宇宙人、脳みそによるバンドのMVが流れ出す これね、なんか見てたら突然ミュージックビデオが始まって全然意味わかんないんですけど曲がめちゃくちゃかっこよくて笑うしかないです。ちょうど予告編のサムネがMV中(?)ですね。曲名は「Frig off!(クソ喰らえ!)」。歌詞も「私が一番」「上司みたいに指図するな」等、キレ散らかしていて笑います。これが普通にめちゃくちゃかっこいい名曲なのでタチが悪い。 「低予算カオス映画の音楽がむだに名曲」というのはB級映画あるあるにしてB級映画がカルト的人気を博すようになる要因あるあるですが、この作品に関してはそのへんは狙って作ってる感も。 とにかくそんな謎名曲を極悪少女とその兄、宇宙人、宇宙人によって脳みそに姿を変えられてしまった少年(!)の四名によるバンドでお届けします。いったい何を見せられているんだろうか? こんな特撮はイヤだ④ ハッピーエンドは物足りない そんなこんなで最終的にはハートフルストーリーの方向にまとまっていく(マジで)のですが、単なるハッピーエンドでは終わらせないのがサイコ・ゴアマンでした。映画に対して「ずっと最悪で面白い」という感想になってしまう作品がやっぱり好きだな……と再確認させられましたね。80年代、SF、特撮、ゴア表現 と聞いて気になる方はぜひ。

February 20, 2024

Slaughterhouse Rulez

スローターハウスルールズを観ました。サイダーハウスルールのタイトルパロディにしては最悪すぎんか?と爆笑していたのですが「サイダーハウスルール」の原作者アーヴィングは「スローターハウス5」の作者ヴォガネットの授業を受講していたと知り、そんな因果が……とさらに笑っています。ちなみにスローターハウス5は個人的に近年読むのに苦労した本ナンバーワンです(どうでもいい) 俳優サイモン・ペッグ&ニック・フロストが設立した映画製作会社Stolen Pictureの第1弾で、イギリスの全寮制名門校を舞台に、地下から現れた謎の生物が巻き起こす恐怖を描いた学園モンスターパニック。父を亡くし自堕落な毎日を送る青年ドンは、母に勧められて全寮制の名門校スローターハウス学園に転入することに。ドンは学園を支配する最上級生から目の敵にされながらも、ルームメイトのウィルや美しい上級生クレムジーと親交を深めていく。そんなある日、学園の敷地内に出来た巨大な穴から凶暴な生物が現れ、生徒たちを次々と襲い始める。 引用元:映画.com 舞台が「学校」となるとどうしても設定がベタになってしまうというか、事なかれ主義の教師や厳しい上級生、高嶺の花的存在のヒロイン……みたいなところにポジションが発生するのはこの作品でも同じでしたが、キャストがみんなそれぞれを生き生きと演じてたのがよかったです。特に学園長を演じるマイケル・シーンがとてもはまっていて良かった。ちょっといけすかないやつほどハキハキして元気がいいんだよな〜って感じで、そういうところも含めて好きでしたね。 ニッペグも当然楽しそうで良かった。二人とも謎のモンスターに襲われてしまうのですが、そのたびに「このシーン絶対やりたかったんだろうな!よかったね!」という感じで緊迫したシーンにも関わらず視聴者に陽気な感想を抱かせてくれるのでよかったです(こいつ「よかった」しか言っていないな?)。 あと主人公のドンたちがクレムジーの兄さんを連れ出すために、兄さんの参加している秘密の宴を木陰から覗くシーンが好きでした。この兄さんが両手拘束と目隠しをされて何やら特殊なプレイ中と思しき姿を見て、キット・コナー演じる下級生ウートンが「フィフティ・シェイズ!!」って感想を述べるのめちゃくちゃ笑ってしまった。フィフティ・シェイズ・オブ・グレイのことで合ってますかね。私は概要をなんとなく知っている程度で見たことはないのですが、ウートンおまえ見たことあるんかよっていうこの、あまりにもツッコミ待ちのシーンすぎて笑ってしまう……。 お話は伏線を色々ばら撒いた割にはあまり回収されなかったりしてとっ散らかったまま終わった印象なのですが、この作品は要するに「いけすかね〜学校だけど恋も友情も頑張りたいぜと思ったら謎のモンスターにみんな襲われてウワーッ!!」という、それが全てだということでいいんだと思います。いわゆるこまけえこたあいいんだよムービーという認識です。ニッペグとマイケルシーンとマーゴットロビーを見ることができたから100点!!M:I ローグネイションでレコードを渡してくれたエージェントくんことハーマイオニー・コーフィールドさんの活躍も見れたから花丸もつけます!!!

January 16, 2024

Edge of Tomorrow

世界は繰り返さないものだ。誰もが同じ恐怖と戦っている。たったひとつの命を敵の前に晒している。(桜坂洋. All You Need is Kill. 集英社 2012) これも見よう見ようと思っていたのですがずっと後回しになっていた作品です。なんで急に見ることにしたかと言うと、某コミュニティで「2010年代のトムクルーズ好きな映画はなんですか?(イーサンハントくん以外)」なるアンケートが行われており、そこでこの作品が圧倒的な票を獲得していたからです。これはそろそろ履修しないといけないと思って…… ちなみに私はJR NGBに投票しましたが、どういうわけかこの作品への投票数がずっと1です。なんでだよ!!めちゃくちゃ面白かっただろ!! 再ノベライズorスレ立てタイトルは「軍の広報係ぼく、軍事ど素人なのに前線に送られた結果タイムループから抜け出せなくなる」で そんなこんなで見たEdge of Tomorrow、絵面は割と派手な部類に入るはずなのに全体の印象としては地味だな〜という、なんとも不思議な感想を抱いています。映像化にあたってはおそらくいくらでも派手に作り変えることはできたのでしょうが、そこはあえて原作のトーンを尊重したんですかね。あくまでもリタとケイジの物語だったところが良かったです。原作の要点をちゃんと踏まえた構成だったし、あとは映画らしくチームのメンバーにも見せ場があった(少しだけど)のも良かった。 ケイジの身上が「広告マン上がりの広報係」という設定も面白いと思いました。五十代の役者に「訓練校出たての初年兵」設定が無理なのは当然として、絶妙に「前線と無関係なほぼ民間人」みたいな立ち位置、説得力があっていいです。ブレンダン・グリーソン演じる将軍に「おまえ前線行って撮影とかしてこい」と言われて「血を見るのも怖いし絶対無理」って全力で拒否するケイジ、おまえは本当にイーサンハントくんと同じ顔の持ち主か?みたいな感じで非常にいい。 そしてそんな絶対に前線いきたくないマンvs絶対に前線におまえを投げ込みたいマンの争いは当然権力を持つ方が勝ち、ケイジくんは無事(?)前線送りに……。 この作品のいいところはなんといってもヘタレのトムが見られるところではないでしょうか。戦地行きたくない(嘘つけよ)血を見るのも怖い(嘘つけよ)安全装置の外し方わからない(嘘つけよ)戦場で怖い目にあってへんな声が出る(嘘つけよ)って感じで見ていて楽しかったです。 あと他の作品でもそうですけどトムがなんかしょうもない人(暴言)を演じている時の「エッヘッヘッヘ……」って笑い方めちゃくちゃイライラさせてくるので大好きだし、ここでも見られて良かったです。 そんなケイジくんが無数の周回を経てどんどん逞しくなっていく様子を見るのも楽しかったです。だんだんいつものトムになっていくのもひとつの醍醐味ですね。ただ今作のトムは基本的に装甲スーツを着用しているので機敏な動きがあまり見れなかったのが個人的には心残りかもしれない(他の作品を見ようね!)。 話の大筋を除けばほぼオリジナルストーリーでしたが、時々原作要素を微妙な形で持ち込んでくるのでそれは少し気になりました。車の中でケイジがリタに「ヘンドリクスはきみにとってどういう存在だったのか?」的な質問を投げかけるが、リタはそれに答えたくない……というシーン、この部分は原作を読んでいればヘンドリクスが「リタの昔の上官でリタの理解者的な存在だったけど戦死した人間」というのがわかりますが、その前知識がなければ完全になんの意味があるのかわからない会話だったなあと思いました。「ちょっとは原作要素入れとくか!」的なテンションで半端な会話劇挟まれてもなっていう。 あとコーヒーも、原作ではリタが用意してくれるけど映画ではケイジがリタにいれてあげていたのも個人的には気になりました。コーヒーはあくまでもリタにまつわるエピソードだったのになあ。でもそれも原作を読んだから色々思うだけであり、映画の中では全体的にキャラクターのバックボーンについては触れられてなかったので何が起きても別にいいといえばいいんですが……。 終わり方も原作とは違いますが、これはこれでいいなあと思いました。日本のライトノベルをハリウッドで映画化するとこうなるぜ!最後はニコニコできる、とっても娯楽映画です。

January 9, 2024

Godzilla -1.0

2024年一本目はエクスペを待つか首かゴジラか悩んだ結果、ゴジラを鑑賞してきました。 以下本編のネタバレを含みますのでご注意ください。 東宝MOVIEチャンネルの日本語動画をうまく埋め込めないので字幕付版を貼っておきます。 焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。 残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。 ゴジラ七〇周年記念作品となる本作『ゴジラ −1.0』で 監督・脚本・VFXを務めるのは、山崎貴。 絶望の象徴が、いま令和に甦る。 引用元:公式サイト 結論で言うと映画館で見て本当に良かったです。この作品は映像技術と音響の迫力のためにあるようなものなので、映画館で体験しなかったら見る意味は全くないとすら思います。VFXやCGのすごさは(有り体に言って)ハリウッド並みのクオリティだったし、日本映画ここまでやれるのかと素直に感動しました。東宝が記念作品(しかもゴジラの)くらい気力体力資金力を投入するとこれくらいのものができるのかっていう、逆に言うとそれくらいのコンテンツにならないとこのレベルを作るのは難しいのかなあ。 ゴジラって割とゴジラはなかなか出てこない節があると思っているので、今作はどんな感じで登場するのかな…と思っていたら開始五分くらいで登場したので笑顔になりました。「あの恐竜みたいなやつ何!?」と人間たちがパニックになる中、海の孤島でジュラシックパーク並みに暴れ回るゴジラは容赦なくてかっこよかったです。小顔で眼光も鋭く爬虫類っぽさがあっていい。 戦後復興しつつある東京の街を容赦無く破壊していくのも1000%絶望しかなくて良かったです(良かったのか?)。今作でも銀座はゴジラにやられていたのですが、銀座シティ、戦後から復興してさらにゴジラの来襲からも復興したけどまた数年後にゴジラが来襲して復興するの強すぎるなって思いました。ゴジラ慣れしすぎている街だな。 脚本は正直個人的には刺さらなかったと言うか、よくわかりませんでした。なんですかね。まずゴジラ来襲という未曾有の災害に国もアメリカも対応しないと言うのはそう言う設定として軽く流すのはいくらなんでも無理では?と個人的にはずっと引きずってダメでした。一応「アメリカはロシアとの関係があるので今はちょっと動けない」という理由がありましたが、個人的には腑に落ちなかった。なんかこの流れ、親が一切出てこない中高生が主人公のアニメみたいだなと思いながら見ていました。 戦争を経て国家に対する圧倒的な不信感や恨みがあってというのは当然そうだろうし、今度の作戦は全員民間人で行なうというストーリーもとても面白いと思います。敷島が乗る震電に橘が脱出装置をつけたというのも、零戦になかったもの、国がしてくれなかったことを自分たちはやるのだというメッセージ性を感じて本当に良かった。作戦参加者への説明会で「家族がいるから無理」とかそういう理由で参加をとりやめた人たちを描いたのもとても良かったと思います。 でもそういう価値観の中で最後倒れたゴジラに向かって全員で敬礼するというのは「これで戦争が終わった」という行動としてはとてもよくわかるのですが、別にやらせなくてもよかったのでは……と個人的には思いました。これはもう感じ方の違いだと思うし「そういうもの」として納得するべき箇所だったんだろうなとは思います。 敷島が「戦うことから逃げて生き延びた結果、そのことに対して負い目を感じている」というのも盛り込むべき要素としては妥当だと思いましたが、橘の「敷島が島でゴジラを攻撃しなかったからみんなやられた」や、澄子の「あんたたちがちゃんとしなかったせい、なんで生きて戻ってきたの?」みたいな叱責も(怒りのやり場がないとはいえ)それって敷島のせいなのかな…?と個人的には腑に落ちませんでした。ドラマパート全体が因果関係によって生み出された結果に説得力が欠けているように感じてしまい、物語に素直に没入できなかった節はあります。 あとはゴジラのメインテーマを流すところが人間側が「やってやるぜ!」的に反撃に出るシーンだったので「ここで流すの?」感はありました。人間側の見せ場で敢えて流すかっこよさ、みたいに捉えればいいのかもしれないのですが、これはゴジラがやべ〜し絶望的だし、けれども神のように不可侵の存在であるみたいな畏怖を知らしめるべく流して欲しかった感はあるんですよね。とはいえこの演出は普通にかっこよかったです。まあ、東宝の偉い人がGo出したんだからいいんでしょう……。 キャラクターによって口調が現代語だったり当時語(?)だったりするのも、どちらかに統一してくれた方がよかったなと思いました。特に敷島と典子は完全に今風の喋り方なので「舞台は昭和だけどこの作品はそういう感じでいくんだ」と思いきや、突然「パンパンにでもなれっていうの!?」と当時語を持ち出してキレ出すのでもはや「もう無理して昭和感出さなくてもいいが……」みたいな気持ちにもなりました。秋津が水島を「小僧」呼ばわりするのもそれはそれで違和感を覚えたりしました。 とにかくこの作品は絵面が全編強いことが本当に最高でした。これを日本の本家ゴジラでやってくれたのは本当によかったと思います。2023年のベストにこの作品を入れている人がたくさんいた理由を自分で目撃できてよかったです。今年もこの調子で映画見ていきます! Edit:2024/01/06 一部を加筆修正しました。

January 5, 2024

今年見た旧作5選・2023

今年映画館で見た3選はてがろぐでやったので、とりあえず今年見た旧作特に好きな5本(90分以上)を記録しておきます。 凱里ブルース 過去と未来と現在がシームレスな円環で繋がっていて、とてつもないクオリティの明晰夢を見せられている感じでした。じっくりもう一回見たいです。 ザ・ロストシティ 劇場で見たかったけど見れなかったやつ。悪役ラドクリフがめちゃくちゃイキイキしていて良かったです。サンドラブロックも一生やかましくて良かった。チャニングテイタムはそこにいるだけで笑えるし、ブラピの無駄遣いすぎて全てが最高だった。 名探偵コナン 迷宮の十字路 せやかて工藤さんの忘れられない初恋のあの子。コナン映画全作は見ていないのですが、見た中では一番好きかもしれない。講談社ミステリあたりからノベライズ出して頂きたい質実剛健ミステリーロマンスだと思いました。 ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 以前1を見た時に、自分的にはそこまで刺さらなかったので「2か…」と思ってずっと手をつけてこなかったのですが、いざ見てみたら信じられないくらい面白かったし最後はずっと泣いていた。女性陣がみんな最高すぎる。あとトムの脚はいついかなる時も安定のかっこよさだな…と思いました。 ウィジャ・シャーク 感想文記事はこちら。ただ低クオリティサメ映画を見たくて見始めたのに「あの世でオカルト殺法対決」とかいう誰も想像しなかった斜め上の展開をやり始めたのは卑怯すぎたのでベスト5に入れます。 以上です。10本にするとまた全体の毛色が変わってくるのかなと思うのですが、ベスト5に絞ると今年は楽しい映画をよく見たし、楽しい映画の楽しさが印象に残っているんだなと改めて思います。

December 28, 2023

First Cow

ライカート監督だ!わーい!というだけで観に行ったら予期せぬトビージョーンズの登場に萌えを拗らせすぎて頭痛がすごかったです(終わり) 物語の舞台は1820年代、西部開拓時代のオレゴン。 アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと、中国人移民のキング・ルー。 共に成功を夢見る2人は自然と意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつく。 それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である、たった一頭の牛からミルクを盗み、 ドーナツで一攫千金を狙うという、甘い甘いビジネスだった――! 引用元:公式サイト このあらすじだけ見ると笑いあり涙ありハートフルストーリーみたいですが、そこはライカート監督なのであんまりそういう感じではないです。ちょっとうまいたとえが見つからないけど「シェフ」(2015)みたいなのを期待すると全然違うと思います。 ライカート流・男二人の激重感情のやりとりを目撃し、その余白に苦しむことができる方は笑ったり涙したりと楽しめることでしょう。でもそれを差し置いても今作はかなり観やすい、ストレートに面白い!と思える作品でした。 ①他人の人生は推測することしかできない カメラと被写体との間にかなりあからさまな遮蔽物を置くのがライカート映画だと思うのですが、今作でもその点は遺憾無く発揮されていてよかったです。草むら、木の幹、家の壁や窓。フォーカスされている被写体の手前には必ずなにか視界を曖昧にするものがあって、それが登場人物との間に大きな隔たりを感じさせます。 観ている側はこの開けられた距離から今画面の中で起きていること、登場人物の考えていること、そういうことを想像しなければならない。この作品はその「余白」を「感じさせる」ことが大きなウェイトを占めていることも良さの一つだと思います。でもライカート監督の面白いところは、想像に任せるだけではなくて描くところはきっちり描いているところなんですよね。何かは確実に起きていて、行動原理もあって、起きた事実もこれから起きることも全部そこには並べられていて、その上で想像の余地を残している。 ファースト・カウはいわゆる「そして冒頭に戻る」タイプの構成で、正直最初からこの先どうなるのかぜんぶわかった状態で進んでいくんですね。さらにその上必要事項は全部抜かりなく描いてなお「余白」を作り出すのは正直すげ〜〜としか思えませんでした。 ②古きアメリカに夢見る「良さ」 この映画いわゆる西部開拓時代が舞台です。自分があまりこの時代のことに明るくないので細かいことはなんともなんですが、今作中は白人(米・露・英等々)・アジア(中国)人・黒人・ネイティブアメリカン等々いろんなルーツを持つ人々が一堂に会していてよかったです。色々あるとは思うのだけど、みんなそれぞれが自分たちの利益のために距離感を測りつつあったみたいな、そういうタイミングもあったんじゃないかな……あったらいいな……と思いました。 あとネイティブアメリカンとの通訳を担う女性の役をリリー・グラッドストーンが演じていて素敵でした。出演時間は短かったけどめちゃくちゃ印象に残る役だったし、またライカート監督がちゃんと描くんですよこれがね……(詳細は劇場で目撃してください) キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンをまだ見てないんですがこの方の演技を俄然見たくなってきました。 ③トビー・ジョーンズがよすぎた いやあのねトビー・ジョーンズ出てくるって知らないで見に行ったら最初のクレジットで名前が出てきたからそれはもう「ごめん今なんて言った?」ってなるわけですよね(同意を求めるなよ)。いったいどんな役で出てくるんだ……と震えていたら、現地駐在(と言えばいいのか?)英軍人(地域の有力者・都会が恋しい)的な役どころでめちゃくちゃ所作がエレガントだったりとにかく挙動がいちいち素敵でだいぶ無理でした。 なのでこの方が出てくるたびにひたすら「トビージョーンズの思い出の味か…」「トビージョーンズの家でお茶会か…」「トビージョーンズの寝巻き姿か…」(トビージョーンズって呼ぶな)等々の感想に苛まれ、おそらく興奮しすぎたのかずっと頭が痛かったです。それくらいよかったです。 本当、もうね……この人がヘラ…と笑うと可愛すぎるんだよ〜(泣き出すオタク)あと何をお召しになっていても似合うんだ。強い。この作品に一切関係ないのですがこのスタイリング可愛すぎるので貼っておきます。

December 25, 2023

Equalizer 3

やっと見てきました。今日まで人様の感想・ネタバレを踏まずに暮らしてきましたが、結果的にとても楽しむことができました。 以下本編のネタバレを含みます。 今回はなんとシチリア半島が舞台。ある案件の始末にシチリアを訪れていたマッコールさん。目的は達するものの、トラブルにより負傷してしまい現地でしばらく療養することになります。そこでお世話になった医師や街の人々との交流を経て、街を支配し人々を苦しめるマフィアのファミリーと対決することに……というストーリー。 ①絵の美しさ なんといってもシチリアの景色が最高ですよね。白い街並みと青い海。細い石階段も石畳も全部美しい。バルに行けばカプチーノが出され、なかなかの観光要素。 関係ないですが「シチリア・マフィアの世界」(藤澤房俊著)という本に、黒い服と帽子を着用して広場の椅子に集合する男性たちの写真が乗っているんですが、今作でバルのテラスに男性たちが集ってテーブルを囲み、よそ者のマッコールさんに視線を向けているのを見て「これかあ〜」と思ったりしました。 そして昼間の明るい色合いとは反対に、夜や黒の描写もとても綺麗で好きでした。彩度のない艶やかな血や、高級家具の光沢、青みがかった錆びたような黒。華美とは正反対にあるイコライザーらしい色彩だなあと思いました。 ②サイレンス・バイオレンス・アクション・ホラー 予告にもありましたが今回のマッコールさんは負け知らずどころか所要時間を大幅に短縮して敵を倒します。アクションシーン全体で言っても、過去作と比べるとダントツに短いと思います。1のホームセンターバトルみたいなワクワク感だとか、2で敵と揉み合ってみたりちょっとピンチでハラハラするみたいな楽しさはほぼないです。 このへんはデンゼルワシントンの体力的な面もあるのかもしれません。68歳だしね。でも「目にも止まらぬ早業で、静かに相手を倒す」ことでマッコールさんの最強にして最恐ぶりを表現できていると思いましたし、姿の見えない何者かに次々やられていくことのホラー描写は過去1だと思います。 いや実際今回のマッコールさんの戦い方はめちゃくちゃホラーでしたね。アクションというよりホラー。「一番怖いのはオバケじゃなくて人間なんだ」的な……。敵のボスを始末するくだりも地味ながらとてもホラーで良いです(笑顔)。 ③ツッコミどころはままある マッコールさんのさいつよ伝説はさておき、ツッコミポイントというか個人的な面白ポイントはいくつかありました。マフィアに恐い目に遭わされてもそんなに動じてなさそうな住民たちとかね。警官と家族がマフィアに脅されて命の危険に晒されたりするんですけど、彼ら一度ならず三度くらい捕まっている。慣れっこか? こういう時家族だけでも遠くにやるとかならないもんかな〜と余計なお世話ながら見ていたり。 あとマフィアのボスの弟がマッコールさんに倒されたため葬儀が行われるのですが、遺影がめちゃくちゃいいやつそうな笑顔で個人的にはツボでした。さっきまで最悪のチンピラだったのに、なんて眩しい笑顔なんだ……。 因みにこのシーンは一族郎党大集合の図なので非常にゴッドファーザーらしさを演出しています。イタリアのマフィアと言ったらやっぱりゴッドファーザー要素は入れとかないとみたいな……? その他、今回はCIA局員のコリンズという女性が登場します。この人はCIAのタレコミ電話受付係でしたが、マッコールさんの通報を受けエージェントとして現場に赴くことになります。そんな急に現場に出れるものなの? という疑問がなくもなく。なおコリンズについてはラストに思わぬ展開が待っており、そこはとてもサイコ〜でした。 ④脚本は惜しいが時間に対しバランスを取ったとも 脚本は正直微妙かなと個人的には思いました。「シチリア半島の美しい景色を見せつつ、なんか悪そうなシチリアマフィアを敵にマッコールさんが無双する感じで!!」というザックリした流れをそのままやったような印象がありました。マッコールさんが負傷したり、異国の地で新たな居場所を見つけるなどの新要素はありましたが。 敵のマフィアについても「テンプレ的悪いヤツ」以上の何かがあるわけでなく、マッコールさんは当然負けないとわかっているのもあり、良くも悪くもストレスなく見れてしまった感じです。ただそれもシリーズ全体の流れで見るからそう思うのかも知れなくもあり、単作としては全然面白いと思います。4は……ないのかな〜。

October 24, 2023