DUNE: PART 2

観てきましたね。以下ネタバレを含みます。 これ完全に「神話」でしたね。なんというかこう、面白かったは面白かったんですが、それよりも「もはやこれは神話だなあ」という感想が自分の中では強かったです。(説明になっていない) 救世主として信仰を集めるポール、それに従う民衆の熱狂、陰謀と確執は砂漠の深い砂のように渦巻いて、全員でその中に飲み込まれていくような、そういう狂気の166分間だったと思います。いや〜〜〜チャニ……(お察しください)。 そしてやっぱりキャストがとにかくいいですね。皇帝がクリストファー・ウォーケンだったのでなんかもうね、この人はさ……「野心家の没落」みたいな役をさせたら一流じゃないですか?(※一流です) そもそも皇帝の過去とかべつに前作でもたいして語られていないのに、初出で「シャダム4世とは何者なのか」みたいなバックグラウンドを存在感だけで表現しているのがすごすぎるんですよね。 そしてレア・セドゥ出てきたからひっくり返るかと思った。レア・セドゥが出てきた時のオタクの反応「レア・セドゥだ!!!!」しかできなかったもんね。レア・セドゥの魔女は似合いすぎるんだよなあ。ベネ・ゲセリット、こういう世に生きる女性はなるべくして魔女になり、力強くて好きですね。 オースティン・バトラーもとても良かったのでフェイド=ラウサが退場してしまって悲しい。なかなか強敵感があったのでもっと活躍が見たかったです。あとなかなかの強敵感だっただけにポールとの決闘シーンがあっさりしていたのも「もっと見せてくれよ!!!」と個人的には思いました。 あと今作を見てリンチ版でスティングが演じた役がフェイド=ラウサだったんだなあと思い出しました。PART1を見て「スティングいないな……?」って思っていたので出てきてくれて良かったです(スティングではない) フェイド=ラウサの生誕イベ(言い方)も良かったですね。ああいうシーンって映像で見る分にはカラーだと情報量が多すぎて散漫な感じになるのかもしれないなあと見ている時は考えていました。モノクロの闘技場って個人的には「ブランカニエベス」(パブロ・ベルヘル監督 2012)を思い出して、あれも良い映画だった。 【ネタバレ】『デューン 砂の惑星 PART2』白黒シーンに込められた意図が深すぎる ─ あのタイミングでなければいけなかったワケ - THE RIVER こういう権力者同士の覇権争いみたいな話って(自分に縁がなさすぎて)面白いんですけど、とにかく彼らのエネルギー量が物凄いので観ていてとても体力を使うな〜といつも思います。近年だとゲームオブスローンズとかね。でもどの物語もだいたい一人二人は「普通っぽい」人がいて、そういう人が観客の好感を集めたりすると思うんですけど、DUNEに関しては個人的には今のところそういう人がいないので、何が起きても永遠に「へー! わー! すご〜い!」が続き、続き、気づいたら幕……終わったが……みたいな、割と置いて行かれた感もあります。そのへんが自分の中での「神話」印象にも繋がっているのかな。 ただなんとなくイルーラン姫はそういう「普通っぽい人」的立ち位置な気もするのですが、まあ全ては3に続く……という感じでしょうか。原作まだ未読なんでね……次回作を待つ間に読みたいです。

March 25, 2024

Psycho Goreman

この「サイコ・ゴアマン」というタイトルを目にした時からすでに好きだったとしか言えないのですが、見たらやっぱり好きでしたね。シネマート新宿で上映されたタイトルというのも個人的にはポイントが高いです(シネマート新宿に信頼を寄せているタイプのオタク)。 太古より庭に埋められていた銀河の破壊者<残虐宇宙人>は、少女ミミ(8歳)により偶然掘り当てられ封印を解かれた。だが、すかさず容赦ない殺戮の限りを尽くすはずが、極悪な性格のミミに自身を操ることが可能な宝石を奪われていた。かくして無慈悲にして計り知れぬ力を誇る暗黒の覇者は、サイコ・ゴアマンと名付けられ少女にたいへんな仕打ちを受けることとなる。一方、残虐宇宙人の覚醒を察知したガイガックス星の正義の勢力<テンプル騎士団>は宇宙会議を開催、最強怪人パンドラを地球に送り込む――。 出典:公式サイト こんな特撮はイヤだ① カナダでB級映画になる 自分は特撮に詳しくないのですが、それでもわかる「特撮」ぶりでした。宇宙人はCGではなく人が着て動くタイプのやつでしたし、PGの仲間たちがPGの招集に応じて地球に降り立ったシーンとかも、リーダーを筆頭に両脇を他のメンバーがやや後ろで控える三角形の配置でこう……「特撮で見たやつ!!」って感じでよかったです。 またこの仲間の一人に「ウィッチマスター」という宇宙人がいるのですが、この人が日本語を話すことなどからも、監督はかなりジャパンの特撮がお好きなんだと思われます。 あと打倒PGを目指す怪人パンドラの造形が、個人的にはこの人を思い出させる感じだったんだけどまったく関係ないですかね。そのへんも各自視聴の上判断して頂きたいところではあるのですが…… こんな特撮はイヤだ② 極悪非道の少女(8歳)に虐げられる ミミです。この映画は彼女に尽きると言っても過言ではないですね。兄を虐げ、気になる男子には気味悪がられ、同じテンションで残虐宇宙人をも従える。とにかく絶対王者を自負してやまないミミのキレっぷりは最高にいいです。十字架の前に跪いて祈っているかと思いきや、神に対して「用無し」呼ばわりとか、こんなパンクな八歳になりたかったよ(なお友達はいない模様)。 ミミを演じるニタ = ジョゼ・ハンナくんは本作が映画初出・主演だそう(芸能活動自体は三歳から)ですが、とてもそうは思えない貫禄と圧がすごいです。初映画でこれだけすごいともはや「素なのでは?」とすら思う。 こんな特撮はイヤだ③ 少年少女、宇宙人、脳みそによるバンドのMVが流れ出す これね、なんか見てたら突然ミュージックビデオが始まって全然意味わかんないんですけど曲がめちゃくちゃかっこよくて笑うしかないです。ちょうど予告編のサムネがMV中(?)ですね。曲名は「Frig off!(クソ喰らえ!)」。歌詞も「私が一番」「上司みたいに指図するな」等、キレ散らかしていて笑います。これが普通にめちゃくちゃかっこいい名曲なのでタチが悪い。 「低予算カオス映画の音楽がむだに名曲」というのはB級映画あるあるにしてB級映画がカルト的人気を博すようになる要因あるあるですが、この作品に関してはそのへんは狙って作ってる感も。 とにかくそんな謎名曲を極悪少女とその兄、宇宙人、宇宙人によって脳みそに姿を変えられてしまった少年(!)の四名によるバンドでお届けします。いったい何を見せられているんだろうか? こんな特撮はイヤだ④ ハッピーエンドは物足りない そんなこんなで最終的にはハートフルストーリーの方向にまとまっていく(マジで)のですが、単なるハッピーエンドでは終わらせないのがサイコ・ゴアマンでした。映画に対して「ずっと最悪で面白い」という感想になってしまう作品がやっぱり好きだな……と再確認させられましたね。80年代、SF、特撮、ゴア表現 と聞いて気になる方はぜひ。

February 20, 2024

Slaughterhouse Rulez

スローターハウスルールズを観ました。サイダーハウスルールのタイトルパロディにしては最悪すぎんか?と爆笑していたのですが「サイダーハウスルール」の原作者アーヴィングは「スローターハウス5」の作者ヴォガネットの授業を受講していたと知り、そんな因果が……とさらに笑っています。ちなみにスローターハウス5は個人的に近年読むのに苦労した本ナンバーワンです(どうでもいい) 俳優サイモン・ペッグ&ニック・フロストが設立した映画製作会社Stolen Pictureの第1弾で、イギリスの全寮制名門校を舞台に、地下から現れた謎の生物が巻き起こす恐怖を描いた学園モンスターパニック。父を亡くし自堕落な毎日を送る青年ドンは、母に勧められて全寮制の名門校スローターハウス学園に転入することに。ドンは学園を支配する最上級生から目の敵にされながらも、ルームメイトのウィルや美しい上級生クレムジーと親交を深めていく。そんなある日、学園の敷地内に出来た巨大な穴から凶暴な生物が現れ、生徒たちを次々と襲い始める。 引用元:映画.com 舞台が「学校」となるとどうしても設定がベタになってしまうというか、事なかれ主義の教師や厳しい上級生、高嶺の花的存在のヒロイン……みたいなところにポジションが発生するのはこの作品でも同じでしたが、キャストがみんなそれぞれを生き生きと演じてたのがよかったです。特に学園長を演じるマイケル・シーンがとてもはまっていて良かった。ちょっといけすかないやつほどハキハキして元気がいいんだよな〜って感じで、そういうところも含めて好きでしたね。 ニッペグも当然楽しそうで良かった。二人とも謎のモンスターに襲われてしまうのですが、そのたびに「このシーン絶対やりたかったんだろうな!よかったね!」という感じで緊迫したシーンにも関わらず視聴者に陽気な感想を抱かせてくれるのでよかったです(こいつ「よかった」しか言っていないな?)。 あと主人公のドンたちがクレムジーの兄さんを連れ出すために、兄さんの参加している秘密の宴を木陰から覗くシーンが好きでした。この兄さんが両手拘束と目隠しをされて何やら特殊なプレイ中と思しき姿を見て、キット・コナー演じる下級生ウートンが「フィフティ・シェイズ!!」って感想を述べるのめちゃくちゃ笑ってしまった。フィフティ・シェイズ・オブ・グレイのことで合ってますかね。私は概要をなんとなく知っている程度で見たことはないのですが、ウートンおまえ見たことあるんかよっていうこの、あまりにもツッコミ待ちのシーンすぎて笑ってしまう……。 お話は伏線を色々ばら撒いた割にはあまり回収されなかったりしてとっ散らかったまま終わった印象なのですが、この作品は要するに「いけすかね〜学校だけど恋も友情も頑張りたいぜと思ったら謎のモンスターにみんな襲われてウワーッ!!」という、それが全てだということでいいんだと思います。いわゆるこまけえこたあいいんだよムービーという認識です。ニッペグとマイケルシーンとマーゴットロビーを見ることができたから100点!!M:I ローグネイションでレコードを渡してくれたエージェントくんことハーマイオニー・コーフィールドさんの活躍も見れたから花丸もつけます!!!

January 16, 2024

Edge of Tomorrow

世界は繰り返さないものだ。誰もが同じ恐怖と戦っている。たったひとつの命を敵の前に晒している。(桜坂洋. All You Need is Kill. 集英社 2012) これも見よう見ようと思っていたのですがずっと後回しになっていた作品です。なんで急に見ることにしたかと言うと、某コミュニティで「2010年代のトムクルーズ好きな映画はなんですか?(イーサンハントくん以外)」なるアンケートが行われており、そこでこの作品が圧倒的な票を獲得していたからです。これはそろそろ履修しないといけないと思って…… ちなみに私はJR NGBに投票しましたが、どういうわけかこの作品への投票数がずっと1です。なんでだよ!!めちゃくちゃ面白かっただろ!! 再ノベライズorスレ立てタイトルは「軍の広報係ぼく、軍事ど素人なのに前線に送られた結果タイムループから抜け出せなくなる」で そんなこんなで見たEdge of Tomorrow、絵面は割と派手な部類に入るはずなのに全体の印象としては地味だな〜という、なんとも不思議な感想を抱いています。映像化にあたってはおそらくいくらでも派手に作り変えることはできたのでしょうが、そこはあえて原作のトーンを尊重したんですかね。あくまでもリタとケイジの物語だったところが良かったです。原作の要点をちゃんと踏まえた構成だったし、あとは映画らしくチームのメンバーにも見せ場があった(少しだけど)のも良かった。 ケイジの身上が「広告マン上がりの広報係」という設定も面白いと思いました。五十代の役者に「訓練校出たての初年兵」設定が無理なのは当然として、絶妙に「前線と無関係なほぼ民間人」みたいな立ち位置、説得力があっていいです。ブレンダン・グリーソン演じる将軍に「おまえ前線行って撮影とかしてこい」と言われて「血を見るのも怖いし絶対無理」って全力で拒否するケイジ、おまえは本当にイーサンハントくんと同じ顔の持ち主か?みたいな感じで非常にいい。 そしてそんな絶対に前線いきたくないマンvs絶対に前線におまえを投げ込みたいマンの争いは当然権力を持つ方が勝ち、ケイジくんは無事(?)前線送りに……。 この作品のいいところはなんといってもヘタレのトムが見られるところではないでしょうか。戦地行きたくない(嘘つけよ)血を見るのも怖い(嘘つけよ)安全装置の外し方わからない(嘘つけよ)戦場で怖い目にあってへんな声が出る(嘘つけよ)って感じで見ていて楽しかったです。 あと他の作品でもそうですけどトムがなんかしょうもない人(暴言)を演じている時の「エッヘッヘッヘ……」って笑い方めちゃくちゃイライラさせてくるので大好きだし、ここでも見られて良かったです。 そんなケイジくんが無数の周回を経てどんどん逞しくなっていく様子を見るのも楽しかったです。だんだんいつものトムになっていくのもひとつの醍醐味ですね。ただ今作のトムは基本的に装甲スーツを着用しているので機敏な動きがあまり見れなかったのが個人的には心残りかもしれない(他の作品を見ようね!)。 話の大筋を除けばほぼオリジナルストーリーでしたが、時々原作要素を微妙な形で持ち込んでくるのでそれは少し気になりました。車の中でケイジがリタに「ヘンドリクスはきみにとってどういう存在だったのか?」的な質問を投げかけるが、リタはそれに答えたくない……というシーン、この部分は原作を読んでいればヘンドリクスが「リタの昔の上官でリタの理解者的な存在だったけど戦死した人間」というのがわかりますが、その前知識がなければ完全になんの意味があるのかわからない会話だったなあと思いました。「ちょっとは原作要素入れとくか!」的なテンションで半端な会話劇挟まれてもなっていう。 あとコーヒーも、原作ではリタが用意してくれるけど映画ではケイジがリタにいれてあげていたのも個人的には気になりました。コーヒーはあくまでもリタにまつわるエピソードだったのになあ。でもそれも原作を読んだから色々思うだけであり、映画の中では全体的にキャラクターのバックボーンについては触れられてなかったので何が起きても別にいいといえばいいんですが……。 終わり方も原作とは違いますが、これはこれでいいなあと思いました。日本のライトノベルをハリウッドで映画化するとこうなるぜ!最後はニコニコできる、とっても娯楽映画です。

January 9, 2024

Godzilla -1.0

2024年一本目はエクスペを待つか首かゴジラか悩んだ結果、ゴジラを鑑賞してきました。 以下本編のネタバレを含みますのでご注意ください。 東宝MOVIEチャンネルの日本語動画をうまく埋め込めないので字幕付版を貼っておきます。 焦土と化した日本に、突如現れたゴジラ。 残された名もなき人々に、生きて抗う術はあるのか。 ゴジラ七〇周年記念作品となる本作『ゴジラ −1.0』で 監督・脚本・VFXを務めるのは、山崎貴。 絶望の象徴が、いま令和に甦る。 引用元:公式サイト 結論で言うと映画館で見て本当に良かったです。この作品は映像技術と音響の迫力のためにあるようなものなので、映画館で体験しなかったら見る意味は全くないとすら思います。VFXやCGのすごさは(有り体に言って)ハリウッド並みのクオリティだったし、日本映画ここまでやれるのかと素直に感動しました。東宝が記念作品(しかもゴジラの)くらい気力体力資金力を投入するとこれくらいのものができるのかっていう、逆に言うとそれくらいのコンテンツにならないとこのレベルを作るのは難しいのかなあ。 ゴジラって割とゴジラはなかなか出てこない節があると思っているので、今作はどんな感じで登場するのかな…と思っていたら開始五分くらいで登場したので笑顔になりました。「あの恐竜みたいなやつ何!?」と人間たちがパニックになる中、海の孤島でジュラシックパーク並みに暴れ回るゴジラは容赦なくてかっこよかったです。小顔で眼光も鋭く爬虫類っぽさがあっていい。 戦後復興しつつある東京の街を容赦無く破壊していくのも1000%絶望しかなくて良かったです(良かったのか?)。今作でも銀座はゴジラにやられていたのですが、銀座シティ、戦後から復興してさらにゴジラの来襲からも復興したけどまた数年後にゴジラが来襲して復興するの強すぎるなって思いました。ゴジラ慣れしすぎている街だな。 脚本は正直個人的には刺さらなかったと言うか、よくわかりませんでした。なんですかね。まずゴジラ来襲という未曾有の災害に国もアメリカも対応しないと言うのはそう言う設定として軽く流すのはいくらなんでも無理では?と個人的にはずっと引きずってダメでした。一応「アメリカはロシアとの関係があるので今はちょっと動けない」という理由がありましたが、個人的には腑に落ちなかった。なんかこの流れ、親が一切出てこない中高生が主人公のアニメみたいだなと思いながら見ていました。 戦争を経て国家に対する圧倒的な不信感や恨みがあってというのは当然そうだろうし、今度の作戦は全員民間人で行なうというストーリーもとても面白いと思います。敷島が乗る震電に橘が脱出装置をつけたというのも、零戦になかったもの、国がしてくれなかったことを自分たちはやるのだというメッセージ性を感じて本当に良かった。作戦参加者への説明会で「家族がいるから無理」とかそういう理由で参加をとりやめた人たちを描いたのもとても良かったと思います。 でもそういう価値観の中で最後倒れたゴジラに向かって全員で敬礼するというのは「これで戦争が終わった」という行動としてはとてもよくわかるのですが、別にやらせなくてもよかったのでは……と個人的には思いました。これはもう感じ方の違いだと思うし「そういうもの」として納得するべき箇所だったんだろうなとは思います。 敷島が「戦うことから逃げて生き延びた結果、そのことに対して負い目を感じている」というのも盛り込むべき要素としては妥当だと思いましたが、橘の「敷島が島でゴジラを攻撃しなかったからみんなやられた」や、澄子の「あんたたちがちゃんとしなかったせい、なんで生きて戻ってきたの?」みたいな叱責も(怒りのやり場がないとはいえ)それって敷島のせいなのかな…?と個人的には腑に落ちませんでした。ドラマパート全体が因果関係によって生み出された結果に説得力が欠けているように感じてしまい、物語に素直に没入できなかった節はあります。 あとはゴジラのメインテーマを流すところが人間側が「やってやるぜ!」的に反撃に出るシーンだったので「ここで流すの?」感はありました。人間側の見せ場で敢えて流すかっこよさ、みたいに捉えればいいのかもしれないのですが、これはゴジラがやべ〜し絶望的だし、けれども神のように不可侵の存在であるみたいな畏怖を知らしめるべく流して欲しかった感はあるんですよね。とはいえこの演出は普通にかっこよかったです。まあ、東宝の偉い人がGo出したんだからいいんでしょう……。 キャラクターによって口調が現代語だったり当時語(?)だったりするのも、どちらかに統一してくれた方がよかったなと思いました。特に敷島と典子は完全に今風の喋り方なので「舞台は昭和だけどこの作品はそういう感じでいくんだ」と思いきや、突然「パンパンにでもなれっていうの!?」と当時語を持ち出してキレ出すのでもはや「もう無理して昭和感出さなくてもいいが……」みたいな気持ちにもなりました。秋津が水島を「小僧」呼ばわりするのもそれはそれで違和感を覚えたりしました。 とにかくこの作品は絵面が全編強いことが本当に最高でした。これを日本の本家ゴジラでやってくれたのは本当によかったと思います。2023年のベストにこの作品を入れている人がたくさんいた理由を自分で目撃できてよかったです。今年もこの調子で映画見ていきます! Edit:2024/01/06 一部を加筆修正しました。

January 5, 2024

今年見た旧作5選・2023

今年映画館で見た3選はてがろぐでやったので、とりあえず今年見た旧作特に好きな5本(90分以上)を記録しておきます。 凱里ブルース 過去と未来と現在がシームレスな円環で繋がっていて、とてつもないクオリティの明晰夢を見せられている感じでした。じっくりもう一回見たいです。 ザ・ロストシティ 劇場で見たかったけど見れなかったやつ。悪役ラドクリフがめちゃくちゃイキイキしていて良かったです。サンドラブロックも一生やかましくて良かった。チャニングテイタムはそこにいるだけで笑えるし、ブラピの無駄遣いすぎて全てが最高だった。 名探偵コナン 迷宮の十字路 せやかて工藤さんの忘れられない初恋のあの子。コナン映画全作は見ていないのですが、見た中では一番好きかもしれない。講談社ミステリあたりからノベライズ出して頂きたい質実剛健ミステリーロマンスだと思いました。 ジャック・リーチャー NEVER GO BACK 以前1を見た時に、自分的にはそこまで刺さらなかったので「2か…」と思ってずっと手をつけてこなかったのですが、いざ見てみたら信じられないくらい面白かったし最後はずっと泣いていた。女性陣がみんな最高すぎる。あとトムの脚はいついかなる時も安定のかっこよさだな…と思いました。 ウィジャ・シャーク 感想文記事はこちら。ただ低クオリティサメ映画を見たくて見始めたのに「あの世でオカルト殺法対決」とかいう誰も想像しなかった斜め上の展開をやり始めたのは卑怯すぎたのでベスト5に入れます。 以上です。10本にするとまた全体の毛色が変わってくるのかなと思うのですが、ベスト5に絞ると今年は楽しい映画をよく見たし、楽しい映画の楽しさが印象に残っているんだなと改めて思います。

December 28, 2023

First Cow

ライカート監督だ!わーい!というだけで観に行ったら予期せぬトビージョーンズの登場に萌えを拗らせすぎて頭痛がすごかったです(終わり) 物語の舞台は1820年代、西部開拓時代のオレゴン。 アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと、中国人移民のキング・ルー。 共に成功を夢見る2人は自然と意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつく。 それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である、たった一頭の牛からミルクを盗み、 ドーナツで一攫千金を狙うという、甘い甘いビジネスだった――! 引用元:公式サイト このあらすじだけ見ると笑いあり涙ありハートフルストーリーみたいですが、そこはライカート監督なのであんまりそういう感じではないです。ちょっとうまいたとえが見つからないけど「シェフ」(2015)みたいなのを期待すると全然違うと思います。 ライカート流・男二人の激重感情のやりとりを目撃し、その余白に苦しむことができる方は笑ったり涙したりと楽しめることでしょう。でもそれを差し置いても今作はかなり観やすい、ストレートに面白い!と思える作品でした。 ①他人の人生は推測することしかできない カメラと被写体との間にかなりあからさまな遮蔽物を置くのがライカート映画だと思うのですが、今作でもその点は遺憾無く発揮されていてよかったです。草むら、木の幹、家の壁や窓。フォーカスされている被写体の手前には必ずなにか視界を曖昧にするものがあって、それが登場人物との間に大きな隔たりを感じさせます。 観ている側はこの開けられた距離から今画面の中で起きていること、登場人物の考えていること、そういうことを想像しなければならない。この作品はその「余白」を「感じさせる」ことが大きなウェイトを占めていることも良さの一つだと思います。でもライカート監督の面白いところは、想像に任せるだけではなくて描くところはきっちり描いているところなんですよね。何かは確実に起きていて、行動原理もあって、起きた事実もこれから起きることも全部そこには並べられていて、その上で想像の余地を残している。 ファースト・カウはいわゆる「そして冒頭に戻る」タイプの構成で、正直最初からこの先どうなるのかぜんぶわかった状態で進んでいくんですね。さらにその上必要事項は全部抜かりなく描いてなお「余白」を作り出すのは正直すげ〜〜としか思えませんでした。 ②古きアメリカに夢見る「良さ」 この映画いわゆる西部開拓時代が舞台です。自分があまりこの時代のことに明るくないので細かいことはなんともなんですが、今作中は白人(米・露・英等々)・アジア(中国)人・黒人・ネイティブアメリカン等々いろんなルーツを持つ人々が一堂に会していてよかったです。色々あるとは思うのだけど、みんなそれぞれが自分たちの利益のために距離感を測りつつあったみたいな、そういうタイミングもあったんじゃないかな……あったらいいな……と思いました。 あとネイティブアメリカンとの通訳を担う女性の役をリリー・グラッドストーンが演じていて素敵でした。出演時間は短かったけどめちゃくちゃ印象に残る役だったし、またライカート監督がちゃんと描くんですよこれがね……(詳細は劇場で目撃してください) キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンをまだ見てないんですがこの方の演技を俄然見たくなってきました。 ③トビー・ジョーンズがよすぎた いやあのねトビー・ジョーンズ出てくるって知らないで見に行ったら最初のクレジットで名前が出てきたからそれはもう「ごめん今なんて言った?」ってなるわけですよね(同意を求めるなよ)。いったいどんな役で出てくるんだ……と震えていたら、現地駐在(と言えばいいのか?)英軍人(地域の有力者・都会が恋しい)的な役どころでめちゃくちゃ所作がエレガントだったりとにかく挙動がいちいち素敵でだいぶ無理でした。 なのでこの方が出てくるたびにひたすら「トビージョーンズの思い出の味か…」「トビージョーンズの家でお茶会か…」「トビージョーンズの寝巻き姿か…」(トビージョーンズって呼ぶな)等々の感想に苛まれ、おそらく興奮しすぎたのかずっと頭が痛かったです。それくらいよかったです。 本当、もうね……この人がヘラ…と笑うと可愛すぎるんだよ〜(泣き出すオタク)あと何をお召しになっていても似合うんだ。強い。この作品に一切関係ないのですがこのスタイリング可愛すぎるので貼っておきます。

December 25, 2023

Equalizer 3

やっと見てきました。今日まで人様の感想・ネタバレを踏まずに暮らしてきましたが、結果的にとても楽しむことができました。 以下本編のネタバレを含みます。 今回はなんとシチリア半島が舞台。ある案件の始末にシチリアを訪れていたマッコールさん。目的は達するものの、トラブルにより負傷してしまい現地でしばらく療養することになります。そこでお世話になった医師や街の人々との交流を経て、街を支配し人々を苦しめるマフィアのファミリーと対決することに……というストーリー。 ①絵の美しさ なんといってもシチリアの景色が最高ですよね。白い街並みと青い海。細い石階段も石畳も全部美しい。バルに行けばカプチーノが出され、なかなかの観光要素。 関係ないですが「シチリア・マフィアの世界」(藤澤房俊著)という本に、黒い服と帽子を着用して広場の椅子に集合する男性たちの写真が乗っているんですが、今作でバルのテラスに男性たちが集ってテーブルを囲み、よそ者のマッコールさんに視線を向けているのを見て「これかあ〜」と思ったりしました。 そして昼間の明るい色合いとは反対に、夜や黒の描写もとても綺麗で好きでした。彩度のない艶やかな血や、高級家具の光沢、青みがかった錆びたような黒。華美とは正反対にあるイコライザーらしい色彩だなあと思いました。 ②サイレンス・バイオレンス・アクション・ホラー 予告にもありましたが今回のマッコールさんは負け知らずどころか所要時間を大幅に短縮して敵を倒します。アクションシーン全体で言っても、過去作と比べるとダントツに短いと思います。1のホームセンターバトルみたいなワクワク感だとか、2で敵と揉み合ってみたりちょっとピンチでハラハラするみたいな楽しさはほぼないです。 このへんはデンゼルワシントンの体力的な面もあるのかもしれません。68歳だしね。でも「目にも止まらぬ早業で、静かに相手を倒す」ことでマッコールさんの最強にして最恐ぶりを表現できていると思いましたし、姿の見えない何者かに次々やられていくことのホラー描写は過去1だと思います。 いや実際今回のマッコールさんの戦い方はめちゃくちゃホラーでしたね。アクションというよりホラー。「一番怖いのはオバケじゃなくて人間なんだ」的な……。敵のボスを始末するくだりも地味ながらとてもホラーで良いです(笑顔)。 ③ツッコミどころはままある マッコールさんのさいつよ伝説はさておき、ツッコミポイントというか個人的な面白ポイントはいくつかありました。マフィアに恐い目に遭わされてもそんなに動じてなさそうな住民たちとかね。警官と家族がマフィアに脅されて命の危険に晒されたりするんですけど、彼ら一度ならず三度くらい捕まっている。慣れっこか? こういう時家族だけでも遠くにやるとかならないもんかな〜と余計なお世話ながら見ていたり。 あとマフィアのボスの弟がマッコールさんに倒されたため葬儀が行われるのですが、遺影がめちゃくちゃいいやつそうな笑顔で個人的にはツボでした。さっきまで最悪のチンピラだったのに、なんて眩しい笑顔なんだ……。 因みにこのシーンは一族郎党大集合の図なので非常にゴッドファーザーらしさを演出しています。イタリアのマフィアと言ったらやっぱりゴッドファーザー要素は入れとかないとみたいな……? その他、今回はCIA局員のコリンズという女性が登場します。この人はCIAのタレコミ電話受付係でしたが、マッコールさんの通報を受けエージェントとして現場に赴くことになります。そんな急に現場に出れるものなの? という疑問がなくもなく。なおコリンズについてはラストに思わぬ展開が待っており、そこはとてもサイコ〜でした。 ④脚本は惜しいが時間に対しバランスを取ったとも 脚本は正直微妙かなと個人的には思いました。「シチリア半島の美しい景色を見せつつ、なんか悪そうなシチリアマフィアを敵にマッコールさんが無双する感じで!!」というザックリした流れをそのままやったような印象がありました。マッコールさんが負傷したり、異国の地で新たな居場所を見つけるなどの新要素はありましたが。 敵のマフィアについても「テンプレ的悪いヤツ」以上の何かがあるわけでなく、マッコールさんは当然負けないとわかっているのもあり、良くも悪くもストレスなく見れてしまった感じです。ただそれもシリーズ全体の流れで見るからそう思うのかも知れなくもあり、単作としては全然面白いと思います。4は……ないのかな〜。

October 24, 2023

Shark Exorcist

ヴァチカンのエクソシストの配信が始まっていますね。早く見放題に来てほしいなあと思っている今日この頃です。 邪教に魅入られ大量殺人を犯した修道女ブレアは、最後の生贄を捧げて儀式を完遂してしまう。世界を恨み、神をも恐れぬ彼女が召喚したのはこの世の全て食らいつくす異形の存在、悪魔鮫≪デビルシャーク≫だった!悪魔鮫は次々と人間に憑依し、平和だったはずの田舎町は血に染まっていく。悪魔鮫の犠牲となった弟の無念を晴らすため、神父マイケルは十字架を手に悪魔鮫祓い≪シャーク・エクソシズム≫に挑まんとしていた…! 出典:コンマビジョン この手の映画はいつも見終わった後にあらすじを読んで「へえ〜そうだったんだ」と知ることが多いです。何が言いたいかというと、要はそういう感じです。 ①謎の修道女ブレア 一人の修道女が墓地を彷徨う光景。背後では「24歳の修道女が大量殺人を犯し指名手配中」のニュースが流れています。ふらふらと彷徨い、岸辺に辿りつくブレア。湖に向かって世界への恨みを叫ぶブレアの元に一人の女性が追いつきます。ブレアの罪を糾弾する女性。ブレアがどんな理由で犯罪を犯し、糾弾する女性は何者なのかはぜんぜんわかりません(ここまでの経過時間:2分)。追い詰められたブレアは女性を刺してしまいます。そしてブレアは復讐者の召喚をとなえながら女性を湖に投げ込み……という冒頭。流れが全然わかりませんが、おそらくこのブレアが悪役で主要人物なんだろうなという察し。 ②いつもの水着で日光浴 それから一年後。とある湖を女子三人組が訪れます。水辺で日光浴アクティビティ女子。サメ映画ではお決まりのアレです。例によってスイミングを楽しんでいた一人(アリ)が何者かに襲われ、事態は急変。アリは瀕死の重傷を負いますが、不思議なことに傷は跡形もなく綺麗に消え、アリは元通りの生活を送れるように。しかし退院後のアリはやたらと水に近づきたがるという不審な行動が目立つようになります。 ③アリ、ハンティングを開始 飲まず食わず眠らず、同居するエミリーも心配するほど挙動のおかしいアリー。実は襲われた際、悪魔に取り憑かれてしまった模様。傷が治り復活したのも悪魔パワーだったというわけです。かわいいルックスもあり、色々な人を水中に引き摺り込むことに成功するアリ。ちなみにアリは水に入ることを想定し常に水着を着用しているのが地味におもしろポイントです。 そんなある日、一人の神父の元に「弟が死んだ」という悲しい訃報が届きます。その原因はやはりアリによるもの。神父は打倒悪魔のため立ち上がります。 ④尺を食うモブたち ここからはなぜかストーリーに特に関係のない人たちの日常(日常?)が続きます。初登場の三人組女子が降霊術を行い、妹の霊を呼び出そうと奮闘。次いで墓地で苦しみのたうち回る白い服の女性が映し出されますが、これがその妹なのか全く関係ない人なのかはわかりません。そもそも三人組がなんで降霊術やってるのかも説明がないし。 また超常現象を専門とするYouTuberのような女性も登場。ハンディカムを構えて撮影するカメラマンに背を向け、我々に向けて話しかけてくる怖い女性です。自称「プロ超常現象捜査官」を名乗る女性は、湖の悪魔を自らに憑依させ、その恐ろしさを視聴者に見せつけます。いや、まあね……プロ超常現象捜査官って何だろう? モルダーとスカリーみたいなあれか? このプロ超(略)女性は最終的に湖の悪魔に体を乗っ取られ(ていうか自分でやった)ゾンビのようにその辺を徘徊し、彼女を尾行してきたライバルYouTuber女子に黄色い液体を吐きかけ襲います。ここは絵面が普通にとても汚いのでビックリします。ホラーってこういうことなのか? ちなみに本家エクソシストを未視聴なのですが「吐く」というのは本家由来だそうですね。今後本家で吐いてるのを見た時「クソシャで見たやつだ〜」って感想を抱くことになるのか。だいぶいやだな。 ⑤悪魔祓い実践編 アリのハンティングは続いていましたが、夜の遊園地で獲物を物色中とうとう例の神父に捕まってしまいます。アリを縛りつけ、悪魔祓いを試みる神父。本当にできるのかというエミリーの問いに「本を読んだことはある」と答える神父。実績ゼロ。そんなことある? 神父はめげずにアリに十字架をかざしますが「小さすぎない?」とエミリーに指摘される始末。しかも例の黄色い液体を多量に吐きかけられ色々と最悪に……。 最終的に悪魔はアリの体から出ていくことを承諾しましたが、代わりに別の人間を要求します。かくして神父はアリの代わりに悪魔に乗っ取られることに。うーんやっぱ悪魔祓いできなかったね! 本読んだだけじゃね! 怯えるアリとエミリーは逃げ出そうとしますが、神父はなんとエミリーの腕に噛み付いてしまいます。やばいよ〜! ⑥そしてどうなったのか アリとエミリーは再び水辺を訪れます。アリは元に戻ることができましたが、噛みつかれたエミリーのことを非常に心配しています。悲痛な表情で桟橋を歩くエミリー。フラフラとした動きで上着を脱ぐと、湖へ飛び込んで姿を消してしまうのでした。エミリーもまた悪魔に憑かれてしまったのです。悲しい……。 一方、またもや初登場の女性が湖を訪れます。人気のない湖畔にタオルを敷き、日光浴を楽しむ女性。一眠りし「そろそろ泳ごうかな」と立ち上がったところを急にナイフで刺されてしまいます。急展開。誰がこんなことを……。 血塗れのナイフを手にしているのはなんとあのブレアでした。えーっと誰だっけ?そうそう、冒頭に出てきた修道女です。 返り血を浴び、満足げにナイフを舐めるブレア。ナイフペロは「あぶねーヤツ」描写でおなじみですが、ブレアは特にあぶねーので3ペロくらいします。舐めすぎだよ。「私の時代が来たわね」と言わんばかりのペロアじゃなくてブレアでしたが、湖から姿を現した女性に襲われ、あえなく湖の藻屑(湖に藻屑があるのかはわかりません)となったのでした。いや……こいつほんとになんだったんだ……? ちなみにこの日光浴女性はうたた寝中に近寄ってきた謎の男により盗撮被害に遭ったりしています。これがまた何の意味もないシーンだから余計にクソなんですけど、とりあえず屋外で安易に眠ることはやめましょう。 ⑦とっ散らかりすぎ映画だった 基本的にはこれで終わりでした。サメもとい悪魔は特に成敗されず、神父もその後どうなったのかわからず、相変わらずサメの悪魔が野放し状態のままというなんともオチのないオチ。解決しないからホラーだと言えなくもないですが、それにしたって冗長すぎですね。④の内容は完全に不要だから、その分短く30分映画でもよかったよ! という感じです。これはZ級だなあ。 ちなみにエンドクレジット後にもミニエピソードがありましたが、これも完全にどうでもいい内容なので触れません。また!

October 23, 2023

Interview with the Vampire

10月後半です。秋も深まり芸術鑑賞のひとときを過ごしたくなるかと思いきや、毎日だいぶ暑いです。夏の亡霊がそのへんを彷徨ってるぜ。 18世紀末、最愛の妻を亡くし、絶望の淵に沈む彼の前に現れた悪魔的美貌の吸血鬼レスタト。彼によって永遠の命を与えらたルイは、レスタトと共に世紀末の夜をさまよう。現代のサンフランシスコ。街を見下ろすビルの一室で、インタビュアーを前に美しい青年ルイが自らの半生を語り始めた。 出典:Filmarks ずっと見たいなあと思いつつ「アマプラにもないしな〜」と思っていたのですが、Netflixにはあることに急に気がつき、ついに見る機会を得た次第です。 ①キャスティング良すぎ問題 ヴァンパイアになったものの人間らしさを捨てきれないルイをブラッドピット、それに対して享楽的で軽薄なヴァンパイアをトムクルーズ、二人と出会いヴァンパイアになることとなった永遠の少女クローディアをキルステンダンストが演じています。個人的にブラピが影のある役をやるのがとても好きだし、若トムの最高に美しい笑顔は悪気なく悪くて好きです。キルステンダンストはね〜少女の容姿で中身は大人、でも大人になりきることもできなくてというとても繊細な演技が素晴らしかったし、薄幸のビスクドールって感じで良かったです。この三人の集合絵(集合絵?)めちゃくちゃ芸術だよ。 あと個人的にビックリしたのはフランスでルイとクローディアが出会うヴァンパイア役をやってるのがアントニオバンデラスという点でした。全然気づかなかったよアントニオバンデラス。400年もの時を生きるスマートなヴァンパイアを演じています。ルイと手を組みたがりますが断られた結果、十数年後には強盗を働いて逃げ込んだ倉庫で闘犬に出会うんだなあ〜。 ②レスタト・インポッシブル M:I1が1996年公開なので、自分の中ではこの頃のトムクルーズはもはやイーサンハントくんとしての印象が強すぎるため、レスタトに対しても「いや〜イーサンの顔で面白いことやってるなあ」という印象を時折抱きつつ鑑賞しました(最悪)。トムクルーズという人間のオーラが眩しすぎるからなのか。とはいえイーサンハントとジョンアンダートンとこのレスタトにはうすら共通点を見出してしまうタイプのオタクです。彼ら絶対仲良くなれなさそう(何の話?) ③苦しみはどこにあるのか 不老不死って人類にとって永遠に離れられないテーマだなあとつくづく思いました。ヴァンパイアのように制約があれど不老不死になれるのがいいのか、寿命はあるけれど人間らしく生きることのできる人生がいいのか。全員が不老不死の世界になればそれはとてもハッピーだけど、今の自分たちが持っている感情や感覚は、多かれ少なかれ失くしてしまうんだろうかとか考えます。劇中でクローディアが若い女性の姿を見て「いつかあんなふうになりたい」と思いつつ、その願いは叶わないと知るやりきれなさ。 彼女の結末はとても悲しいけれど、少しほっとした自分もいました。 あと不老不死になったら単純に生活コスト永遠にかかるんだなとか考えました。それもだいぶきついよな〜。ルイとレスタトどうやって生活費工面してるんだろう。ともあれ90年代のサンフランシスコの夜、美しかったね。

October 20, 2023